『今夜、すべてのバーで』は、自他ともに認める筋金入りの薬物中毒者であり、アルコール依存症にも苦しんだ中島氏が、自身のアルコール中毒による入院から、とりあえずの回復を果たすまでの体験談を小説仕立てで綴ったものです。
「とりあえずの回復」と書いたのは、結局、中島氏は最終的にアルコール依存症から脱却することができず、度重なる薬物乱用が遠因となって夭折してしまったからです。
非常に読みやすい文体で知られた中島氏の著作だけあって、取り扱っているテーマは決して明るくないのに読後感も良く、とても素晴らしい作品です。まだ未読という方は、文庫で手軽に読めますので、ぜひ一読をおススメします。
私がこの本を読んだのは、もう10年以上前になるかと思いますが(中島氏も健在でした)、その頃はまだ30歳手前だったということもあって、それこそ浴びるように酒を飲んでいた時期です。まさにアルコール漬けだったわけですが、本書に感銘を受けつつも、中島氏の体験自体はなぜか他人事のように感じていたのも確かです。
飲酒を続けることに少し造詣が深まった今なら、もっと違う感想を持つかもしれません。ちょっと本棚の奥から引っ張ってこようかな…。
今夜、すベてのバーで (講談社文庫)