もちろん、禁酒に対する強い意志があれば、あるいは常用飲酒の習慣が完全になくなった人であれば、たとえ家にお酒があったとしても「飲みたい」という衝動を抑えることができるかもしれません。
しかし、禁酒や節酒を始めて間もない人であったり、一度本格的な依存症に陥った経験がある人にとっては、お酒を見る機会がある、あるいはお酒がすぐ手の届くところにあるという状況は、極めて厄介なものです。
それこそ完全にドクターストップがかかっているような場合でもない限り、「お酒をやめよう」という気持ちは簡単に覆る危険性を常にはらんでいます。残念ながら、お酒にはそれだけの魅力がありますし、理性をさらっと吹き飛ばすパワーを持っています。
長年の飲酒経験がある人の場合、一念発起して「今日はお酒をやめよう」と思っても、実際にやめることができるか否かは、本当に「紙一重」の差で決まります。友人や同僚に飲みに誘われる、仕事で嫌なことがあるといった、ほんのちょっとしたきっかけ一つで「今日まではいいか」となってしまうことは、多くの方が共感できるのではないかと思います。
ストック酒の存在は、十分にそのきっかけになり得ます。実際私自身、今日は飲まないと決めていたのに、たまたま開いた冷蔵庫に冷えたビールが入っているのを見て、「まあ今日は1本だけ飲むか」という結果になったことが何度もあります。
できるかぎり自分の周りから飲酒の「きっかけ」を減らすこと――やはりこれは、禁酒や節酒を成功させる大きなコツの一つと言えるのではないでしょうか。